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 研究を進めていく中で、メモに残しておいたほうがよいと思われるような、ローマ法カノン法(教会法)の基礎知識、あるいは広くラテン語にまつわる豆知識をこちらに記しておきます。私の備忘録の域を出るものではありませんが、多少なりともご参考になれば幸いです(誤りが含まれている可能性もありますので、そのつもりでご参照ください)

最終更新日 2022年08月17日(水)

標準註釈 (glossa ordinaria) について。中近世の法学文献のなかでは、たんに「註釈 glossa」と呼ばれることが多い。市民法大全の標準註釈と言えば、アックルシウス (Accursius, 1182?-1260?) の註釈のこと。他方、教会法大全のうち、『グラティアヌス教令集 Decretum Gratiani』の標準註釈はヨハンネス・テウトニクス (Johannes Teutonicus, c.1170-1245) の註釈を指し、のちにバルトロマエウス・ブリクシエンシス (Bartholomaeus Brixiensis, d.1258?) がこれを改訂した。『グレゴリウス9世教皇令集 Decretales Gregorii IX』(別名を『集外法規集 Liber extra』とも)の標準註釈はベルナルドゥス・デ・パルマ (Bernardus de Parma, d.1266) の註釈、『第六書 Liber sextus』と『クレメンス集 Clementinae』の標準註釈はヨハンネス・アンドレアエ (Johannes Andreae, c.1270-1348) の註釈をそれぞれ指す。[注:青字の人名はクリック可]

勅法彙纂への新勅法の混入について。バルトルスやバルドゥスなどの中世の註解書では、『勅法彙纂 Codex』中に『新勅法彙纂(公撰書 Authenticum)』の法文がしばしば混在している。このことについては、野田龍一「シュテーデル美術館事件における四半分の控除 (1)」(福岡大学法学論叢61巻1・2号[福大リポジトリ])82頁注13が詳しい。

​◆封建法書 (Libri Feudorum) について。11世紀から13世紀にかけて編まれた「封建法書」ないし「封建慣習法集成 Consuetudines Feudorum」は、中世のローマ法では新勅法彙纂の最終第10編に組み入れられており、そのテキストは、例えば、ゲバウエル=シュパンゲンベルク版の市民法大全で確認できる。邦訳についての情報は、法制史研究9号(1959年)の書評 [J-Stage] を参照。

贖罪 (De penitencia) について。グラティアヌス教令集第2部の Causa 33, quaestio 3 には「贖罪について」と表題が付されている。

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